
ラベルはもちろん、
イエルマン氏自身によるもの。
なんでも「虹」をデザイン
したものだとか。
「Were Dreams,
now it is just wine!」
というワイン名も、
なんだかスゴイです。
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「一ノ蔵・無鑑査」という日本酒があります……有名な銘柄ですので、ご存知の方も多いと思いますけど。
「無鑑査」の「鑑査」とは、国税局・酒類審議会で行われていた「級別審査」のこと。この審査に合格した日本酒は「特級」あるいは「一級」を名乗ることができますが、その代償として?「無鑑査」すなわち「二級」酒より、高い税金を納めなくてはなりません。
よって。大手メーカーは宣伝広告に有利な「特級」の称号を入手し、高い税金は商品価格に上乗せ。一方で中小酒造所の「地酒」は、価格競争力の面からも高い税金を納めることままならず、「二級」に甘んずるしかありません。
ところが、通常なら「特級」となるであろう高品質な日本酒を、あえて安価な「二級」として販売し、より大勢に味わってもらおう。そんなコンセプトをもって造られたのが、宮城県・一ノ蔵酒造の「無鑑査」でした。自ら「級別審査を通っていない」ことを誇り、商品名にまでしてしまったわけです。……なんだかとっても、アマノジャク。
でも、今日のおいしい日本酒があるのは、そんなアマノジャクな行為をはじめとする、中小酒造所の努力のおかげ。そして、「級別審査」制度は平成4年に廃止されましたが、一ノ蔵酒造「無鑑査」は人気銘柄として、今も造られ続けているのです。
………とまぁ。長いマクラとなりました。
さて、ワインの世界では、「産地統制」という考え方があります。なんというか……いわゆる「格付け」のこと、とでもいいますか。
例えばフランスのワインで、「ボルドー」を名乗ろうと思ったら、その生産地がボルドー地区だというだけではなく、ブドウの品種から醸造法まで、「ボルドー」銘柄として守るべき確固とした「基準」があるわけです。
これはワインの品質を守るための、必要かつ有益なシステム。その点、今は亡き悪法「日本酒級別審査」と根本的に異なることは、いうまでもありませんが。
しかし、そんなある意味では窮屈な「格付け」制度に従わなくたって、おいしいワインを造ることはできる……と考えたアマノジャクな人物が、イタリアにいました。
彼は自らが信ずる理想のワインを目指し、新しい独自の製法を試みました。しかし、そうして出来上がったワインは、それがどんなに高品質なものであっても、残念ながら「格付け」の基準には合致しません。ですから彼のワインは「VdT」、つまりテーブルワインクラスとしてランクされてしまいます。
ただ、逆に考えますと、彼のワインは、「格付け」ワインに課せられる数々の制限事項とは無縁です。ですから彼は、ワインに妻の名前をつけて売り出したり、あるいはラベルを自分でデザインしてみたり……と、なんだかとっても楽しそう。
その彼というのが、シルビオ・イエルマン氏。イエルマン社のワインは、今や最高級の評価を受けているのだそうです。「格付け」は「VdT」のままですが。
朽見行雄「イタリアワインの職人たち」(JTB刊)からの受け売りでした。同書は他にもユニークなエピソード満載、一読をお勧めします。 |