旧・色眼鏡回覧板〜2


01/10/24 魔法の薬


試してみる?


 商品紹介記事で見かけた、「飲めば歌が上手になる」という錠剤……それが本当なら、まるでファンタジーに登場する「魔法の薬」、ではありますが。
 その名も「ミスティック・エナジー」、キャッチコピーは「天使の歌声」。ネーミングは、かなり「魔法の薬」っぽい感じ。マグネシウムとリンゴ酸の働きにより、心臓の血流や肺に送る酸素量を高め、声帯をリラックス。音域を広げ、声に「張り・ツヤ・伸び」をもたらす… とのフレコミです。
 元々は心肺機能を酷使するプロスポーツの選手用にと、アメリカで開発されたものだとか。しかし「アメリカでプロスポーツ選手用に」というのは、「NASAで開発」と並んで、アヤシイ通販の常套句……。
 説明を読む限りでは、結局ミネラルとビタミンを配合した健康食品のようです。飲んで悪いことはないでしょうけど……効果はいかほど?



01/10/31 謎のメカ再び


これはきっと、
ブラックゴーストの新兵器
じゃあないな……。



  仕事の帰り、遅い夕食でもと立ち寄った、ちょっと構えのきれいな居酒屋。席の準備に少々お時間をと、店先で待たされることになりました。
 10月も終わりのこの時期、夜は気温も下がります。外で待てとはずいぶんだなぁ、と思いつつ……おや、全然寒くありません。なぜ? そこに置かれた「やたらと軸の太いパラソル、もしくは背の低い街灯」型の機械に、どうやら秘密があるようなのですが……。
 その正体は「パラソルヒーター」。ガスバーナーにより発生させた熱を上部の傘で反射、本体を中心に数メートルの範囲を暖める、屋外用の暖房器具なのでした。
 一見してそれと分からない、シンプルで気の利いた外観。某アウトレットモールのカフェテラスにて目撃、というヨメの情報もあり。やはり、イマドキ風な飲食店やレジャー施設で使われることを、メーカーも想定しているようです。
 まぁ用途としては、先日の「スポットクーラー」と対を成すものですが。こと「オシャレ度」からすると、実に雲泥の差があるというか、指向自体が正反対だなぁ……などと思う次第なのでした。



01/11/7 正映鏡(結局何と読むのか分からない… しょうえいきょう?)


発明家・北村さんは
「大好きな巨人の松井選手に
スイングチェックの姿見として
使ってもらいたい」
などと語っておられた
そうですが。



 先ごろ、ちょっと話題になった「正映鏡」。ご存知ですか?
 三重県の北村さんという方が考案した、左右が逆ではない「本当の姿」を映す鏡です。仕掛けはいたって簡単。透明なガラスと鏡2枚を三角柱型に組み合わせ、中に水を注げばあら不思議、右手を上げれば鏡像も右手を上げる「正映鏡」の出来上がり。(図参照)
 何よりも驚くのは、その機構の単純さ。こんな誰でも考えつきそうなものが、今まで存在していなかったなんて……。特許庁の役人もそう思ったのでしょうか、通常すぐに認められる実用新案の審査に、なんと8年。ようやく登録の運びとなって、喜ぶ「町の発明家」北村さん……というのが今年の3月、耳にしたニュースだったのでした。
 それから半年。なんとなく便利そうな「正映鏡」、未だに商品化の話を聞きません。考えてみれば、けっこう設置面積は必要だし、具体的な用途は思いつかないし……。こんなシンプルなシステムがこれまで特に知られていなかった要因は、そこいらあたりにあるのかもしれません。

追記 (03/10/8)
 その後、リバーサルミラーなる名前で商品化されたようです。特に爆発的人気、という話も聞きませんが……。松井選手は、今や大リーガーですね。


01/11/21 世の中をちょっと「ナナメ」からながめるようになる


『「社会調査」のウソ』
谷岡一郎著
文春新書 2000年刊
面白いョ。



 マスメディアでよく取り上げられる「世論調査」などに、疑問を持つことはありませんか? そりゃあ「ライオン総理」は嫌いじゃねェけど、現支持率75%ってのは高すぎねェ? とか。
 例えばアンケートで、
「あなたはライオン総理を…
 1.支持する
 2.どちらかといえば支持する
 3.支持しない」
 などというふうに設問を設定されているとしたら、「支持・不支持」の2択より、支持率が上がるのは明らか。また同じ支持率75%でも、「未だ75%の高支持率」という書き方と「前回調査より減、80%を割り込む」という書き方では、おのずと印象が違ってくることでしょう。
(あくまで例え話です。実際にこのような調査があったという訳ではありませんので、念のため)
 ……といったような事柄を、専門家の立場から克明に分析しているのが、谷岡一郎著『「社会調査」のウソ・リサーチリテラシーのすすめ』。冒頭から「少々過激な内容」と宣言する本書は、数多くの実例を挙げ、「社会調査の過半数はゴミ」と断罪します。著者の怒りは、いいかげんな調査手法からマスコミや政府官公庁、あるいは大学学会へと……もう、とにかく怒っています。あんまりにも怒っていて、それがユーモラスにすら感じられるほど……。
 そして、本書を読みおわりますと、新聞やテレビで発表される社会調査の結果を、素直な気持ちで見ることができなくなってしまいます。こんな結果が出てるけど、ホント? ウソじゃないの? 常に、懐疑的状態。それがいいことなのか悪いことなのか……そうなるべきである、と谷岡氏は主張するのですが。
 なにはともあれ、世の中を「色眼鏡」でながめたい方には必読、なのでした。



01/12/5 謎の撮影隊


雅子さまが分娩室に
入られたとの発表から、
実際のご出産まで
約24時間。
銀座をはじめ、各地の
電光ニュース撮影隊は、
長いことカメラを構えて
お疲れさまなことでした。



 銀座で友人と一杯やった、終電間際の帰り道。歩道にしゃがみこむ、妙な人影がありました。地面にカメラをセッティングして、どうやらなにかを撮影中の様子です。
 ヨメ「夜景マニアかな?」。確かに、ポートレートやスナップを撮っているようには見えません。夜景マニアという推測は、妥当なところではありますが……。
 レンズの先を目で追ってみれば、そこには銀座4丁目・浜一ビルの電光ニュース板が。どうやら、カメラマンの目的はそこにあるようです。しかし、いつ来るか来ないかも分からないニュースを、ずっと待ちつづける…… なんてことも、ありますまい。では、いったい?
 そこで、考えました。テレビドラマや映画などで、時にお目にかかる、街角での電光ニュースが流れるシーン。これは、そんなロケの現場なのでは? 夜遅くの撮影も、人気のない時間を狙ったものだとすれば納得。周りを見渡してみれば、こころなしかスタッフらしい姿もあるような……これはもう、間違いありません。
 という結論を導きだして、「よかったよかった」とうなずき合う我々。その場は満足して、帰途についたのでした。
 そして、「テレビドラマのロケ現場」という推測が間違っていたとわかったのは、翌日、12月1日午後のこと。当然、認識してしかるべきことでしたのに、マヌケな話です。
 ……もう、お分かりですね。そう、あのカメラマンは「いつ来るか来ないかもわからない」ではなく、「間もなく必ずやって来る」ニュースの撮影が目的だったのでした。
 皇太子さま・雅子さま、お子さまのご誕生、おめでとうございます!



02/1/9 普通のバッグに入るサイズで、10分で組み立てられ
価格は2000ドル程度で、都市設計を変えるほどの
世紀の大発明


正直なところ、
けっこう欲しいとか
思ってたり…
ビジュアルイメージの持つ
説得力って、
なにはともあれスゴイ。



 世の最高学府にて行われている学問とは、おおむね何の役に立つのかよくは分からないもので、分からないからこそ面白くも重要である、などという話も聞きますが……特に理系分野などでは、およそ実用とは無関係に思える研究が、日々行われているようです。
 例えば「倒立振子(とうりつしんし)」。その名の通り、上下逆さまの振り子です。子供のころ手のひらに立てて遊んだ傘やホウキが、いわばその典型的サンプル。当然不安定なそれを、いかに安定して立たせるか……というのが、制御工学の重要な学術的研究課題らしく、偉い大学の先生方が長年、ああでもないこうでもないと、研究を重ねているのだそうです。
 ……つまり、何の話かといいますと、「セグウェイ」なわけです。「ジンジャー」といった方が、通りがよいでしょうか。
 2001年初頭から「世紀の大発明」と騒がれ、先ごろ公開された「立ち乗りスクーター」。前評判は、やや大袈裟に過ぎたような気もいたしますが、それでもハンドルもブレーキもなしに自在に操縦が可能で、悪路や段差も平気で乗り越えて走行する「セグウェイ」のニュース映像には、皆さまも少なからず興味を引かれたことと思います。
 この「セグウェー」、実はまさに、倒立振子の基本原理そのもの。見た目も同じ、平行2輪車上に倒立振子を立てた実験モデルが、すでに10年以上前に「日本ロボット学会」で発表され、しかも特許まで申請済み。考案者である大学教授は、「自分が元祖」と主張しているようなのですが……。
■ まぁ、いずれが先か、の問題はさておき。その倒立振子を「セグウェー」という形で実用化してしまったところが、すなわちアイデアの勝利。学者とビジネスマンの違いといいますか、プレゼンテーション能力の差といいますか、うまいことやったな、といいますか……。
■ 結局、「セグウェー」に出し抜かれた偉い大学の先生方は(おそらくは内心穏やかではないにしても)引き続き何の役に立つのか分からない研究に、今日も余念がないのでしょう。
 そして、それはやっぱり、尊いことだよなぁ……と思う次第なのでした。

追記 (03/10/8)
 この「セグウェイ」、現在アメリカでは$4,950にて販売中。日本に輸入OK! という国内業者もあるようですが、それはちょっと無茶だと思います。欠陥が見つかってリコール、なんて騒ぎもあったようですね。



02/2/13 保険の利く「美容外科手術」


人間のからだは、
いろんなところで
つながっているのだなァ。



 近ごろよく耳にする「美容外科」。それをメインテーマとするテレビ番組まであったりして、今や世の中、ちょっとした美容外科ブームといえそうです……まぁ、その是非は置いておきますが。
 美容外科の特に目を大きくしたり二重にしたりという手術後、頭痛や肩こりの症状が、不思議と改善される例が多いのだとか。理由はこれまであまりはっきりせず、半ば気分の問題とも考えられていたようなのですが……まぶたの状態と頭痛・肩こりとの間には、実は強い因果関係があることが、最近の研究で分かってきたのだそうです。
 まぶたを上下させる筋肉は、実は非常にデリケート。老化や目をこする癖などで痛みやすく、また一度その腱がゆるんでしまうと、今度はまぶたを開いているだけで、強い緊張状態が続くようになってしまいます。
 それによって疲労感や頭痛が引き起こされるのが、「腱膜性眼瞼下垂症」という病気。治療法は、垂れ下がったまぶたを、手術によって持ち上げるという……まさに「目を大きくする」美容外科手術そのものだったのでした。なるほど。
 ちなみに、まぶたの「重」の数は治療効果と無関係なのだそうですが、患者のほとんどは手術時、二重にすることを希望するのだとか。……「どうせなら」、という心境でしょうか?


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