色眼鏡イタリア紀行


組み立て式ビジネスクラス


「ついたて」セッティング中の
イタリアンスチュワード。
あなどりがたし。



 日本からイタリアへと向かう道中、フランクフルトにて航空機乗り換え。なんだか遠回りのような気もしますが、まぁいろいろ都合があるのでしょう。
 それはともかく、フランクフルトからローマまで搭乗するのが、アリタリア航空。その機内でのこと、なのですけど……。
 乗客が、おおかた席についたころ。一人の乗務員が客室中央あたりに、やおら「ついたて」のようなものをセットし始めたのです。
 それも、最初の取りつけ位置ではうまくいかなかったらしく、それならばと場所をずらしてしまうほどのアバウト具合。セッティングが完了すると、彼は「ついたて」付属の通路用カーテンを引いて立ち去ったのでした。
 これはどう見ても、客室を区別するための仕切り。すなわち「ついたて」より向こうがビジネスクラス、こちらがエコノミーであるとしか、考えようがありません。
 日本国内便の場合、スーパーシート等の上級席ならば、サービスの充実に加えて、座席も一般席より広く良いものが用意されています。
 しかし、アリタリア航空。「ついたて」で区切るぐらいですから、座席の大きさはもちろん同じ。どうやら機内食に違いがあったようですが、とはいえそれも、2時間のフライト中に出る軽食でのこと。果たして、いかほどの差か……。
 すなわち、座席の数だけ増殖可能なビジネスクラス。なんという、フレキシブル! これがイタリア人気質、というものなのでしょうか?
 この「ついたて」セッティング作業を、目撃してしまった乗客が、その後高額なビジネスクラスを選択するか……は、やや疑問の残るところです。



遺跡都市の夜間照明



 遺跡都市・ローマ。街中、遺跡だらけ。遺跡がそのまま、現在も街として機能している、といった方がいいかもしれません。
 ローマ市もそこいら辺りは心得たもので、昔からあるものは基本的に「なるべくそのままで」という政策方針とか。普通に人が住んでいるアパートが、聞けば築ン百年。驚きます。石の建物って、丈夫ですね。
 そして、夜になれば幻想的なライトアップ……ライトアップ?
 遺跡は保護の対象である一方で、重要な観光資源。「なるべくそのままで」以上にカッコよく見せたいと思うのも、理というものです。
 写真は、かの「コロッセオ」のライトアップ用照明器具。特に隠すわけでもなく、無造作に置いてあるその様子には、逆にある種の「潔さ」を感じずにはいられません。



テレビの「占いコーナー」


占いの内容を「○×△」といった
記号で表してくれれば、
よく分かるのに………
と思うのは、日本の懇切丁寧な
テレビ番組形式に
慣れきっている証拠。



 イタリア滞在中、スイッチを入れたテレビの画面に映し出されたのは、まぎれもなく「占いコーナー」。なにぶんイタリア語のため詳細は不明なのですが、どうやら「占星術による今日の運勢」といったような内容のようです。
 海外旅行にいくと、なんだか妙なナショナリズム的思考にとらわれることがあります。例えばその「占いコーナー」。テレビや新聞・雑誌などメディアの巻末あたりに必ず「占いコーナー」があって、それに一喜一憂するなど、日本独特の現象だろうなぁ……というふうに、ぼんやり思っていたりもしたのですが。
 ちょっと考えてみれば分かる通り、オカルティズムは欧米が本場。占星術の結果に、政治や経済活動すら左右される、というウワサも聞きます。テレビ番組に「占いコーナー」があることぐらい、実に当たり前の話なのでした。
 ……といったようなことを、テレビを見ながら考えていたわけでもなく。何を言っているのかさっぱり分からない外国語の占い、せめて「いい」か「悪い」かぐらいは知りたいなぁ……などと、「占いコーナー」にハマっている自分がいたのでした。



イタリアっ子の遠足


ちなみに最後尾は、
引率の先生と思われます。
遠足の引率が大変なのも、
世の東西を問わず、でしょうね。



 ポンペイの古代遺跡を訪れた時のこと。出口のあたりで、イタリアっ子らしき少年少女の一団とすれ違いました。小学校高学年、といった年のころでしょうか。背中にはデイパック、おしゃべりなどしながら、列を作って遺跡へと向かっていきます。……これってやっぱり、「遠足」ですよね?
 小学校の遠足といえば、日光やら鎌倉やら、近郊の名所史跡に連れて行かれた憶えがあります。どうやらイタリアでも、行き先の決められ方は同じよう。それにしても、世界的に有名な遺跡を遠足で訪れることができるなんて、イタリアの子供はうらやましい……。
 しかし、よく思い出してみると、かつて小学生の身として、そんな名所史跡にどれほどの感銘を受けたでしょうか? 先日世界遺産にも選ばれた、かの歴史的建造物を目の前にしても、当時は「ハラ減ったなぁ」ぐらいの気持ちだったような気が……。
 そんなことを考えながら、改めて遠足のイタリアっ子を観察。心なしか「暑いなぁ」「サッカー観戦したいなぁ」といった表情で、周りの景観にはさして興味がない様子……世の東西を問わず、名所史跡の魅力を理解するには、それなりの年齢が必要なようです。



バチカン美術館の分かりやすい絵


このポーズがなんとも……
さすがイタリアンデザイン。



 バチカン宮殿の美術館を訪れました。ラファエロ、ミケランジェロ……美術の教科書で見たことのある、有名絵画でいっぱいです。
 ただ、そこが素養のない悲しさ。正直なところ宗教画には、いまひとつピンとこなかったりします。大きいなぁ、きれいだなぁ、リッパだなぁ……などとぼんやり思いつつ、移動途中の階段。ふと目を上げると、そこにはひどく説得力のある絵が。
 黄色を背景に、階段をズッコケている人のシルエット。どうやら「転落注意」の標識のようです。「どうやら」というか、それ以外には考えられませんけど。
 かつての宮殿内部に作られた美術館、古い石造りの階段は、時に急でやや危ないところも。注意が必要なことは確かでしょうが、それにしてもこの分かりやすさには、思わず笑いが……。
 とはいえ、世界中から大勢の人が訪れる超有名観光地・バチカン。「分かりやすさ」は、実は非常に大切なことに相違ありません。



ベネチアの「トリックアート」時計塔



 ベネチアは、サンマルコ広場の時計塔。訪れる時にはちょうど修理中で見られない、と聞いていたので、やや残念な気持ちでいたのですけど……実際に着いてみると、あるではないですか、目の前に美しい時計塔が!
 ……とまあ、そこまでいうと、やや大げさに過ぎますが。実は、組まれた足場を覆う布に、時計塔の修繕完了予想図(?)が描かれているのです。ベネチアの象徴である「翼の生えたライオン」像や、時計の文字盤もなかなかにリアル。遠くからながめる分には、それとは気づかないかもしれません。
 さすが「アドリア海の女王」というお土地柄。ずいぶんと、しゃれたことをするものです。



サンマルコ寺院の防御策


とっても痛そうな針の列、
でもくつろぐ鳩。



 ベネチアの中心、サンマルコ広場。正面に位置するサンマルコ寺院は、壁がモザイク画に彩られた、とっても大きな教会です。
 その美しいモザイク画の下、柱の軒にあたる部分に、何やら妙な突起物を発見。針状の金属棒が、一定間隔を置いて垂直に植えられているのです。……これはいったい、何?
 そして周りを見渡せば、広場にはつきものの、あの生き物の群れ……そう、鳩です。この突起物は、鳩よけに違いないのでした。
 日本でよく見る鳩よけといえば、大きな目玉を模したという黄色い円盤や、キラキラ光る反射物、あるいは防鳥ネットといったところ。それが、鳩に直接物理的ダメージを与える「針」とは…… 「平和の象徴」に対して、なんという仕打ちでしょう。
 とはいえ、改めてその針のあたりを見てみますと、その隙間に収まるようにして羽を休める鳩の姿が。どうやら、苦心の物理的防御策も、あまり効果はないようなのでした。



なんだか見慣れたものが……


日本から伝来?
それとも実は、イタリア発祥?
まさか……うーん、謎。



 「猫よけペットボトル」を、ご存知ですか? 空のペットボトルに水を詰めて、道端や家に周囲に置いたものです。それがどうして、猫よけになるのかというと、猫はキラキラする反射光を嫌うから、あるいは自分の姿が映るのに驚くから……などと、いささかアヤシイ説明がなされています。
 しかし、その効果が今ひとつはっきりしないのに加えて、レンズと化したペットボトルがボヤ騒ぎを起こしたこともあって、最近はあまり見かけなくなりました。……よもやそれを、この異国の地で眼にしようとは!
 というわけで、イタリアはベネチアの街角。外の柱にセッティングされたこれは、まさに「猫よけペットボトル」以外のなにものでもありません。
 そして、その気になって首を巡らしてみると……トラ縞のイタリアン・ノラキャットと、目が合ったりもするのでした。



海外の空港は広いので……


大柄なドイツ人が体を丸めて、
こんなミニサイクルをこぐ姿は
ちょっとユーモラス。



 イタリアからの帰国の途。トランジットはやっぱり、フランクフルト空港。
 海外の国際空港は、なんだかやたらとだだっ広いような気がします。まあ「成田」が狭い、ということなのかもしれませんが、それはともかく……ここフランクフルト空港も、「広さ」という点では抜群といえるでしょう。
 そんな場所で役に立つのが、自転車なのでした。もちろん屋外ではなく、屋内での話。
 ……通路を、空港職員が自転車で疾走していきます。そう、フランクフルト空港では、構内の移動に自転車を使うのは、どうやら当たり前のことのようなのでした。
 こんなあたり、さすがに自転車王国・ヨーロッパ……? ちょっと違うか。


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